石油ピーク接近説について (続)
一本松 幹雄
先般、石井吉徳教授の「豊かな石油時代が終わる」や「石油ピークは今日か、じき近の時期に起る」につき、異論を提起しましたが、このテーマについて附加的情報を提示したく思います。
(1)アメリカ、中国、インドなどで石油輸入が増加しつづけており、2030年の世界の石油需要の予測(1億2000万バレル/日−IEA予測、1億4000万バレル/日−IMF予測)が正しければ、それだけ供給力を増強するのは困難と見られ、石油需給はひっぱくすると見られる点は石井教授と同意見です。
(2)しかし、歴史的に見て、石油ピーク説は過去に何回も、くり返し報じられました。1951年、アメリカで大きな注目を集めたパトナム・レポートではアメリカの石油生産のピークは1953〜55年ごろとされていました。1977年ごろ、アメリカでも日本でも、石油生産のピークは1990年ごろという予測が支配的でした。1977年、アメリカのCIAは旧ソ連の石油生産は1980年ごろピークを迎え、その後は減少していくとの予測を発表しましたが、今日から見ると、全くの誤まりでした。
(3)当面、石油供給力は増大するとの予測もある。
アメリカの有力な石油問題研究者のD.ヤーギン氏は「今後数年間、市場に大量の追加供給がある」と予測し、有力地域として旧ソ連及びカスピ海、中東、西アフリカでそれぞれ700万バレル/日 程度の追加供給があるだろうと指摘している。同氏が代表のCERA(ケンブリッジ・エネ研)では去る6月20日、「世界的に石油は2010年までは供給力が需要を上まわる」との予測を発表しました。
(4)サウディ・アラビアの石油生産能力について、今日程度が限界ではないかという意見もありますが、増産可能という見方が強く、ヌアイミ石油鉱物資源相は2009年には供給能力は1250万バレル/日 にすると言明しています。
サウディでは、近年、資源開発のための投資を控えていたが、投資を進めようというムードがおこりつつあると伝えられます。
(5)ガワール油田の老化、水功法の強化の懸念について
ガワールは5〜6もの巨大な油田が地底では同じ油脈だとして、ガワールと総称されているもので、 500万バレル/日もの生産をしている過程で、水攻法など、いろいろの2次回収法をとっている。近年の生産量はコンスタントな状況で、いちがいに老化しているとは言えないという意見があります。
(6)サウディ・アラビアの石油生産について悲観論をとなえるシモンズ氏とヌアイミ石油・鉱物資源相とが04年11月、サンフランシスコで討論したが、参加者の間では、ヌアイミ氏の見解を支持する反応が強かったと伝えられます。
なお、シモンズ氏が先日、サウディの没落をテーマに「Twilight in the Desert」という本を刊行しました。
(7)サウディとアメリカとの関係が01.9.11のアメリカ東北部でのテロ事件以来、不協和説が高まっているが、アメリカ、サウディ両国政府とも友好関係は基本的には変らぬと判断しており、先日ブッシュ大統領とアブドラー皇太子とがアメリカで会見して、両国間の友好関係を確認したところです。
以上
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Sent: Monday, June 06, 2005 5:18 PM
Subject: EEE会議: 「高く乏しい石油時代」説に異議あり : 一本松幹雄氏の意見
皆様
度々当EEE会議で話題になっておりますように、「オイル生産はピークを過ぎており、高く乏しい石油時代が始まる」との見方(その最も雄弁な提唱者は石井吉徳氏=東大名誉教授)は昨今、我が国でもかなり有力になってきているように思われますが、この説に対し、一本松幹雄氏((財)若狭湾エネルギー研究センター、元関西電力、元IAEA)から次のような異論が提出されました。ご参考まで。
反論、異論、賛成論など大いに歓迎します。匿名でも結構ですが、できるだけ実名でどうぞ。
--KK
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「高く乏しい石油時代」説に異論
(財)若狭湾エネルギー研究センタ
一本松 幹雄
「高く乏しい石油時代がくる」という石井吉徳教授の警告が各方面で報じられておりますが、この問題についてのアラムコ(サウディ・アラビアの国有石油会社)幹部の見解をお伝えしたいと思います。
私は国際石油資本の根拠地と言われるニューヨークで8年余り勤務し、アメリカの石油関係者とよく交流していた経験、サウディ・アラビアのアブケイク、ガワール油田の近辺を2回にわたり見学した経験もあり、その予備知識にもとづき、アラ