050416 「核テロ防止条約」案 の採択 − 「原子力平和利用の権利」とは何か?
皆様
国連総会の国際テロリズム特別委員会(Ad Hoc Committee on
International Terrorism)は、7年間にわたる審議と交渉の結果、一昨日(4/1)、「核テロ防止条約」(International
Convention for the Suppression of Acts of Nuclear Terrorism; 略称 Nuclear
Terrorism
Convention)の草案を全会一致で採択したようです。この条約草案の狙いは、核兵器を使ったテロのほか、原子力発電所や原子炉などを標的にした攻撃をしたり、核物質を使って脅迫したりした犯人の引き渡しや訴追を各国に義務づけることで、同条約案は、総会で正式に採択された後、来る9月半ばから開催される第60回総会で、各国の署名のために開放されることになっている模様です。
この条約案の採択に関する国連のプレスリリースやアナン国連事務総長の声明等は次のサイトに掲載されております。また、これに関連する新聞報道をいくつかご披露します。(情報提供:シグナスX?1氏)
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核テロ禁止条約、9月に署名へ 国連総会委が採択
(朝日新聞 2005年04月02日)
国連総会の国際テロリズム特別委員会は1日、「核テロリズム禁止条約」の草案を全会一致で可決した。今月中に国連総会で採択される予定だ。
核兵器を使ったテロのほか、原子力発電所や原子炉などを標的にした攻撃をしたり、核物質を使って脅迫したりした犯人の引き渡しや訴追を各国に義務づける。さらに、情報の交換と協力を各国に求める内容。
アナン事務総長は核テロについて「現代における最も切迫した脅威だ」と語り、条約の早期発効を求めた。
条約づくりはロシアが98年に提案した。しかし、「平和利用のための放射性物質や機器の貿易は阻害されないと明言すべきだ」(イラン)などの意見が出て、合意までに時間がかかったという。
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<補足説明>
1.
本件条約案作成交渉の過程で、米国が、原子力平和利用を核拡散の口実に利用すべきでないとの趣旨を条約の前文に入れるべしと提案したところ、イランが、それならば、「NPT加盟国はすべて、原子力平和利用の技術、資材、物質等の交換に参加する権利を有する」とのNPT第4条の規定を明記すべきだと提案し、紛糾した経緯があるようです。上記朝日新聞記事の末尾に書かれているのはこのことを指すものと思われます。なお、当該箇所が最終的にどのような文言に落ち着いたかは現時点では不明です。
2.
この条約案とは別に、国連総会の国際テロリズム特別委員会では、国際テロ防止に関する包括的な条約案(draft comprehensive
convention on international terrorism)の作成交渉も引き続き進められる趣です。ご参考まで。
--KK