050228 Re: 水力発電は火力発電より地球環境に有害である! (斉藤 修氏の意見)
標記のメール(2/25)でご紹介したNew Scientist記事に関して、斉藤 修氏から次のようなコメントをいただきました。ご参考まで。
--KK
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過日の水力発電の汚染効果の記事について、私の考えをお送りいたします。
1.ニューサイエンティスト記事の要旨
水力発電の汚い秘密が明らかになった
ダンカン・グラハム・ロウ
2005年2月24日
気候変化に関する政府間パネル(IPCC)のためのコンサルタント、Eric Ducheminは、「皆が水力は非常にきれいであると思っている、しかしこれは間違いである」という。
アマゾンにあるブラジルの国立研究所 Philip Fearnsideは、「世界変化の緩和と適応戦略」で出版される研究で、ブラジルのCurua-Unaダムでは、同じ量の電気を起こす火力発電の3.5倍以上の温室効果があると見積もっている。
これは貯水池の水中に浸された植物中の炭素が開放され、メタンとなる。水が水車を通過する時に大気中に開放されるからである。
季節により水位は絶えず変動し、腐敗する植物を供給する。メタンの効果は二酸化炭素の21倍である。
水位変動の範囲は数千平方キロに及び、材料を供給する。
水力が温室ガス放出源であるとの主張は新しいことではない(ニューサイエンティスト2000.6)。
2006年のIPCCの次のラウンドでの全国温室ガス放出計算では、人工的に水没した地域からの排気を含むであろう。しかしこれには最初の10年間、表面排気を考慮するだけである。
気候科学者の合意がないのでメタンガスの抑制はなされないであろう。
水力発電はまだ地球温暖化現象を和らげるという実質以上の評判を得ている。
2.私の意見
この記事では水力発電の貯水池におけるメタンガスの生成とその放出を問題にしているが次のような疑問がある。
1)論旨に矛盾がある。
説明では水中で生成されたメタンガスが、水車を通って空中に放散されるとしている。
メタンガスの生成は有機物の嫌気性醗酵によるものであり、長期に水の動きのない状態で起こる。しか
し一方メタンガスを含んだ水が水車に流れるとしており、矛盾である。水が動いていれば、容易にメタ
ンガスは生成されない。
また水位変動が大きく、継続的に多くの材料を供給しているとしているが、水位変動が大きければメ
タンガスの発生は起こりにくい。
2)数量的な説明がない。
述べられている事象は、原理的には確かに起こりうることであろうが、問題はその量である。
文中で温室効果は火力の3.5倍を超えるとしているが、その具体的説明はなく、にわかに信じがたい。
3)気候科学者の同意がない。
文中でも述べられているが、この説に対して学者の同意はなされていない。
以上の事から、現段階ではこの説は信奉ずべきものとは考えられない。
当面、2006年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)でこの問題がどのように取扱われるか、見守りたい。
以上
----- Original Message -----From: Kumao KANEKOSent: Friday, February 25, 2005 10:06 AMSubject: EEE会議(水力発電は火力発電より地球環境に有害である!)
皆様水力発電は地球環境に優しいというのが一般常識のようですが、実際には、発電用ダムからは大量の二酸化炭素(CO2)やメタンガスが発生していて、化石燃料を使う火力発電よりむしろ悪い影響を及ぼしているーーという意外な事実が判明しているようです。国際的な気候変動問題専門家会議(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)のコンサルタントやブラジルの科学者たちの意見です。どうしてそういうことになるのか、詳細は次のNew Scientist誌の最新号の記事でどうぞ。--KK*************************************************************************