◆[もんじゅ改造]「運転再開へ信頼性を高めよ」
(読売新聞社説 2005/2/8)
運転再開へ向けて、ようやく一歩を踏み出す。
一九九五年末のナトリウム漏れ事故から九年以上も運転を停止していた高速増殖原型炉「もんじゅ」の改造工事が、近く始まることになった。
福井県の西川一誠知事が、国の安全性確認の結果と地域振興策の内容を適切と判断し、了解した。核燃料サイクル開発機構(核燃)の工事と試験が順調に進めば、二〇〇八年に運転を再開する。
ずいぶん時間がかかった。主な原因は核燃の前身である旧動力炉・核燃料開発事業団による事故後の対応がお粗末で、地元の不信を買ったことにある。事故の状況を的確に説明せず、現場を撮影したビデオを隠したりした。
同じ轍(てつ)を踏んではならない。
改造工事では、ナトリウム漏れの原因となった温度計の形を変更するほか、漏れた場合の対策を強化する。工事の内容や試験の状況を丁寧に説明しながら、着実に再開を目指すべきだ。
ナトリウムは水分に接触すると爆発的に反応する。「もんじゅ」に対する批判の根拠の一つになってきたが、改造工事で安全性は一層向上する。
原子力の研究開発は、安全性の確保が最優先であることは言うまでもない。その向上のため不断の努力を重ね、幅広く理解を求めていかねばならない。
「もんじゅ」の運転再開は、国内だけでなく、海外からも注目されている。ウラン資源を有効活用する「核燃料サイクル」の研究開発拠点になるからだ。
高速増殖炉は、投入した核燃料より多くの核燃料を生み出すことができる。炉の中で効率良く核反応が起きるため、放射性廃棄物の量も少なくなる。
資源に乏しい日本は、エネルギー安全保障の観点から核燃料サイクルを国策として推進しており、「もんじゅ」には要としての役割が期待されている。
国際的にも、資源の有効活用と廃棄物削減のため、次世代の原子炉は「もんじゅ」のような高速炉になるとされ、多国間協力を含めた研究が進んでいる。
多彩なタイプの高速炉が検討されているが、「もんじゅ」は商業発電をも目指し、技術的に最も進んでいる。フランスなどは研究参加を望んでいる。
ウラン資源はまだ豊富なだけに、当面は軽水炉の利用や改良に比重を置く国が多い。だが、中国やインドのように、将来のエネルギー確保のため、高速増殖炉の開発を加速している国々もある。
研究開発に「もんじゅ」を徹底的に活用し、将来の実用化に生かせるような体制を一歩一歩、築きたい。