EEE会議(北朝鮮核問題はどう展開するか?)
2003年6月3日
各位殿
北朝鮮核問題の動向が相変わらず不透明で、膠着状態がこのまましばらく続きそうな
予感がしますが、その中でとくに懸念されるのは、北に対する態度に日米と
韓国で
かなりの温度差があるということです。北もそれを当然計算に入れていて、そこに一
層強力な楔を打ち込んで来るでしょうし、ブッシュ政権は、盧武鉉政権の反応の仕方
を、ある程度突き放した格好で(在韓米軍の撤収をちらつかせながら)静観している
ように見えます。一方中国が、胡錦涛新政権の外交的デビューを機に、対北朝鮮政策
を、従来の傍観者的態度からもう少し積極的な方向に転換させようとしているのかど
うかも、いましばらく様子を見守る必要があるでしょう。北朝鮮問題の今後を展望す
るために、この際次の分析(いつもの国際政治ジャーナリストによる)で現状認識を
整理しておくのも有益かと思います。ご参考まで。
金子熊夫(フランクフルトにて)
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◆米の対北朝鮮核トップ外交がひとまず小休止◆
(2003/06/03)
ブッシュ米大統領は6月1日、仏エビアンで、胡錦濤・中国国家主席と会談
し、これで、北朝鮮核問題に関しこの5月から行われ、韓国、日本、ロシア、
中国と続いた同大統領の一連の首脳外交はひとまず小休止となった。
日米韓は今後、6月中旬の予定で準備が進められている日米韓3カ国政策調
整会合で、北朝鮮に「検証可能で不可逆的な核開発放棄」を迫る戦略を協議す
ることになるが、外交努力による解決というお題目しか決まっておらず、具体
策となると不透明のまま。北朝鮮の脅威が増した場合の「追加的措置」(米韓
首脳会談)、「より強硬な措置」(日米首脳会談)の内容も煮詰まっていない
。
ブッシュ・胡錦濤会談では、ブッシュ大統領が米朝中の3者協議の仲介に関
し胡主席に謝意を表明したが、米朝のみの直接交渉にはノーの立場を改めて表
明。多国間協議の枠内での米朝接触もはねつけた。無論、打つ手がないのは「
核保有」と叫び続ける北朝鮮も同じ。
このような情勢下、北朝鮮訪問を終えて韓国入りしたウェルドン議員(共和
)ら米下院議員団は6月2日、ソウル市内での記者会見で、北朝鮮の白南淳外
相らが使用済み核燃料棒8000本の再処理をほぼ完了したと認めた、と言明
。北朝鮮が依然として瀬戸際外交を追求していることを確認した。
同じくソウル入りしているウルフォウィッツ米国防副長官はこの日、4月の
北朝鮮の核保有表明は「冗談などではない。真剣に考慮し対応を検討している
」と厳しく評価。盧武鉉・韓国大統領が同日、就任100日を前に青瓦台で、
北朝鮮が「核を保有していると断定できる根拠を韓国はまだ持っていない」と
述べたことと対照的。
韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮の漁船4隻が同日、黄海上の北方限界
線(NLL)を越えて韓国領海を侵犯。北朝鮮の領海侵犯は5月26日から連
日少なくとも1件、合計で12件発生。特に米中首脳会談が北朝鮮問題を話し
合った6月1日には、北朝鮮漁船8隻がNLLを越え、韓国側が警告射撃で追
い払っている。
盧大統領が、日米の北朝鮮政策とかなりの「温度差」のある言動を繰り返し
ていることと、度重なる北朝鮮の韓国領海侵犯は因果関係がありそうだ。(了)
国際情報ファイル・深層海流主幹 石川純一(文責)
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