Subject: EEE会議((Re:原子力開発の進め方:豊田・柴山氏の議論)
Date: Sun, 6 Apr 2003 20:32:55 +0900
From: "kkaneko" <kkaneko@eagle.ocn.ne.jp>
各位殿
豊田正敏氏のコメントに対する柴山哲男氏のコメント(4月5日)に対し、豊田氏か
らさらに次のようなコメントをいただきました。 ご参考まで。
因みに、明日(7日)から2週間小生訪米のため止むなく当EEE会議を一時休憩させ
ていただきますが、せっかく議論が盛り上がっているところなので、できれば関係者
同士で直接電子メール等しかるべき方法で、この議論を続けていただきたく、その場
合は後日(EEE会議再開後)、関係メールをまとめてご披露いただければ誠に幸いで
す。(関係者各位のメールアドレスは、これまでのメールの末尾に明記されておりま
す。)
以上、よろしくお願いいたします。
金子熊夫
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柴山氏のコメント有り難うございます。これに対して簡単にコメントします。
1. 代替案
先ず、私は現時点で直接処分に賛成しているわけではありません。40~50年間、長
期貯蔵をした後、その時点でプルサーマルまたは高速増殖炉が実用化され経済的にな
れば、再処理しプルトニウム・リサイクルをすべきであると提案しており、もし、そ
の時点でそれらが実現しない場合には、直接処分を選択肢とすべきであると考えてお
ります。
海水からのウラン採取については、原研が津軽海峡で実規模の捕集材によって実地
で確かめており、また、海水温度が10℃上昇すれば、捕集効率が2倍になることも確
かめております。問題は、ウラン回収のためのインフラストラクチャーの建設費が高
くつくのでその低減を図るべきであり、コンサルタント会社またはジェネコンの積極
的な協力が必要と考えます。
トリウム発電炉については、私の提案は、軽水炉の燃料としてトリウムにプルトニ
ウムまたは、濃縮ウランを混ぜたものを使用し、運転に伴なって発生するウラン233
も利用するもので、原子炉特性も従来の軽水炉とそれほど違いはなく、かつ、転換比
を高め、燃焼度も高くすることができると期待されます。プルトニウムをプルサーマ
ルで燃やすよりはプルトニウムの有効活用が図られ、経済的であると考えます。使用
済燃料は当面長期貯蔵し、将来、高度再処理技術が実用化された段階に、再処理し、
ウラン233を回収して利用することが考えられます。
2. 使用済燃料の保管
原子力発電所には、立ち入り禁止区域が必要なことから、40~50年間の使用済燃料
を貯蔵できる十分なスペースがあります。地元の了解が難しい一因は、原子力委員会
が再処理・プルサーマルに固執し、地元に対して、使用済燃料は敷地外に持ち出すと
約束しているためと考えられます。
3. 保障措置
直接処分の保障措置について、真剣に検討している国はないと思います。使用済燃
料プール及び輸送の際と同程度の保障措置で十分であると考えます。
埋設後の再発掘については、数百年ないし数千年後に記録がなくなり、後世の人が
誤って(鉱脈などと勘違いするとか、温泉採掘のため)発掘することに対する防止策に
ついて検討されております。
4. 直接処分
もっと各国の直接処分の実情についてご自分で調査される必要があると考えます。
国情により、処分概念は一様ではないが、各国とも多重バリアとしてオーバーパック
(キャニスター)、ベントナイト及び地層を考えています。オーバーパックとして鉄の
容器にTi合金の外張りをする設計を採用していますが、私は、その方法の信頼性に疑
問を持っており、溶接学会で外張りの方法及び溶接の健全性の確認方法についての提
案について講演したことがあります。しかし、それほどの問題ではなく、わが国でも
十分信頼性のある処分方法は可能であると考えております。経済性については、既
に、「エネルギー」の誌上及び原子力学会の誌上討論で述べているように、燃料サイ
クル費は、現段階では再処理、プルサーマルの場合に比して約1/2になると試算され
ます。再処理、プルサーマルの場合には、この他に、TRU廃棄物の処分の技術開発が
必要でありますが、現在のところ、その処分概念も決まっていない状況です。
以上
----- Original Message -----
From: kkaneko
To: Undisclosed-Recipient:;@m-kg202p.ocn.ne.jp;
Sent: Saturday, April 05, 2003 8:50 AM
Subject: EEE会議(Re:原子力開発の進め方:豊田氏のコメントに対して)
各位殿
豊田正敏氏の累次のコメントに対し、柴山哲男氏から再度補足的コメントをいた
だきました。ご参考まで。一層多くの方々からのご発言を期待しています。
(金子)
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私のメールに対する豊田氏のコメントの内、直接処分に関する部分に対して初歩
的
とのご指摘を頂きましたが、初歩的なりに次の通り補足説明させて頂きます。な
お、
高速増殖炉に関する部分については基本的に同意致します。
1 直接処分が永久処分を意味することは確かですが、米国のように将来のプルト
ニ
ウム利用の可能性を残している場合もあるので、敢えて確認した次第です。永久処
分
の場合、将来のプルトニウム利用の可能性を完全に排除することになるので、永久
直
接処分に踏み切るためには、プルトニウム利用に代替する他のエネルギー源の確保
が
必要であると思います。豊田氏の御指摘の海水からのウラン採取、トリウムサイク
ル
はその候補となり得る可能性はありますが、前者は実験室的に成功した段階、後者
は
試設計の段階であり、経済性の確証を含めた実用化の見通しが立たない限り、プル
ト
ニウム利用を完全に排除することはリスクが多すぎると考えます。最終的にはこれ
ら
代替手段の経済性と高速増殖炉の経済性の比較で有利な方を選択することになると
思
います。高速増殖炉の経済性は第一義的には現在の軽水炉から円滑に移行するため
に
軽水炉とほぼ同等であることが要求されますが、究極的には他の代替手段との比較
に
なる可能性もあります。
2 処分場の所要面積については御指摘の通り、共通部分もあり、設計により、面
積
の増加は処分体の容積比に対してはかなり抑えられる可能性はあります。しかし、
冷
却期間中の保管は別に考える必要があり、例えば現在六ヶ所で再処理を計画してい
る
800トン/年を50年間保管するとすれば、総保管量は40,000トンにな
り、
初期はプールまたは乾式保管、後期は固化する場合は多分固化体の乾式保管と保管
形
態は異なるもののかなりの量になります。現在六ヶ所のプール保管が3,000ト
ン、むつ市で計画中の中間貯蔵施設が計6,000トンに比べれば6〜10倍以
上、
更に発生使用済み燃料全体を処分するとすればこの2〜3倍になります。安全上は
問
題の少ない施設であり不可能とは言えませんが楽な数字ではないと思います。処分
場
の一部を冷却保管と共用にすることも考えられますが、トータルとして見ていく必
要
があります。
3 核不拡散、保障措置の問題に関してはこれがテロ組織を対象としたものではな
く、当該国を対象にしたものであることを考慮する必要があります。日本の核武装
の
可否についてはEEE会議でも討議されていますが、当面核兵器開発を行う可能性
は
少ないとしても国家として開発する気になれば潜在的可能性を有しているだけに何
ら
かの対応は必要であると考えます。固化前の監視は技術的には特に問題ないと思い
ま
すが、当該燃料体が確実に固化されたことの検認、固化体保管中が確実に実施され
て
いることの検認、処分体が処分場の所定位置に確実に設置されたことの検認、設置
後
埋設までの間に移動のないことの検認、更に埋設後再発掘の行われないことの検認
な
どカメラ監視だけで良いのか、固化以降は非破壊検査等による内容物の検認まで要
求
されるのかどうか等検討課題は多いと思います。なお、この辺については先行して
い
るスエーデン等の例が参考になるかと思いますが、この辺の事情を御存知の方がお
ら
れましたら情報を提供して頂ければと思います。
4 海外で実施が検討されているからといっても米国は一種の長期中間貯蔵であ
り、
且つ核保有国ですが、非核保有国のスエーデン等の場合は絶対量が少ないという事
情
もあります。ドイツについては参考になり得ますが、原子力政策自体が未だ流動的
な
感もあります。以前の私のメールでも直接処分に関してもっと積極的な検討を行う
よ
う提案をしていますが、海外で実施しているからと良いということではなく、日本
と
して導入する場合にはどうなるか、経済性も含めて具体的な検討を行って初めて成
否
が問われるのではないかと考えます。
柴 山 哲 男
tetuo shibayama
shibayama@mvh.biglobe.ne.jp